毛皮族

財団、江本純子

HISTORY

売るものがある性

vol.8
売るものがある性

作・演出
江本純子
出演
市川しんぺー 佐久間麻由 荻野友里 本山歩 江本純子

5人の俳優たちは、この世に存在するありとあらゆる「おばさん」を演じている。この劇において「おばさん」という登場人物が何人いるのか、一見不明。何かに悩んでいるおばさん、意地の悪いおばさん、働きもののおばさん、親戚のおばさん達、劇団でくすぶっているおばさん、何人ものおばさんが登場しながら、劇は進行していく。いつしか、これは「おばさんにならないように自分の世界を変えていこうともがいているおばさん(ジュンコ)」とその母親である「もはや世界なんか何も変わらなくても生きていける強いおばさん(レイコ)」、この親子について描いている劇だと気づくだろう。ただ生きていれば、ひたすら日常でしかないし、いずれ「死」が巡ってくるだけだが、その日常の中で何度となく遭遇する小さな祝祭が、その誰だかわからない誰かの「生」を特別なものにしている。おばさん(生きていったら勝手になること)への絶望が、おばさん(生きていったら勝手になること)への賞讃に変わる頃、この劇は終わる。

[ 2015年4月23日~29日 アトリエヘリコプター ]

舞台監督 鈴木康郎 /美術・映像 南志保 /照明 伊藤孝 /衣装 今村あずさ /制作 佐々木康志

撮影:曳野若菜